東京高等裁判所 昭和31年(う)3161号 判決
被告人 清水光男 外一名
〔抄 録〕
原判示第一の窃盗の事実は、被告人清水の共謀の点をも含めて、原判決列挙の関係証拠を綜合して考察すれば、優にこれを肯認することができるのであつて、なお記録を検討しても、原審のこの点に関する事実の認定に誤りがあるものとは認められない。然るに、所論は、被告人清水は右犯行につき一旦首謀者と為つたが、後悔悟し、自己が参加しなかつたならば、他の共謀者等も犯罪を決行しないだろうと考え、現場に赴かつたのであるから、仮令首謀者たる相被告人等に於て右窃盗行為を実行したとしても、自己は犯行を中止したものである、と為し、恰も被告人清水の刑事責任を否定するか或は減軽せらるべき事由がある旨主張するもののようであるが、然し、苟くも他の者と共謀して犯罪を為そうと企てた者が、著手前之が決行を思い止つたとしても、他の共謀者の犯行を阻止し、又は少くとも其の者との共謀関係を解消せざる限り他の共謀者が自己との共同犯意に基き実行したる行為につき共同正犯としての刑事責任を免れ得ざるものと解すべきところ、証拠を精査するに、同被告人に於てかかる措置に出でた形跡はなく共謀関係の解消も認められないから、弁護人の右主張は採用することができない。
(中西 山田 石井謹)